Qの方程式(2)

以前にも書いた覚えがあるけど、「物語」というものは「設定」と「ドラマ」で成り立っている。この二つを分解すると物語の本質が見えてくる。特に「新世紀エヴァンゲリオン」なんかそうだ。設定を取り払ってドラマ部分だけ抽出してみると、テレビシリーズ全…

Qの方程式

恥ずかしながら今頃になってようやく「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を見た。いや、ネットで悪い評判しか聞かないから怖くて見れなかったんだよ。でも先週、図書館に行ったらDVDのコーナーにQを発見したので思わず借りてしまった。劇場公開から二年近…

社会派ドラマ円環(3)

長々と書いてきた社会派ドラマ論もようやく大詰めを迎える。前回は山本薩夫と和田勉という二人の巨匠の話で終わってしまったが、今回は「半沢直樹」に直接影響を与えた作品群について語っていこう。社会派ドラマというジャンルは80年代になるといったんオ…

社会派ドラマ円環(2)

今回もしつこく「半沢直樹」について書いていくよ。前回の記事で、このドラマは黒澤明が果たせなかったリアリズムとロマンティズムの融合を、半世紀のときを経て見事に果たしてしまった、と書いた。どうしてそんなことが出来たのかをこれから明らかにしたい…

社会派ドラマ円環

月日のたつのは早いもので、大ブームになった「半沢直樹」が終わって二ヶ月がたった。この番組が最終回で今世紀最高の視聴率をはじき出した一週間後、社会派小説の巨匠である山崎豊子が亡くなった。なにやらオカルトめいた暗合を感じさせる出来事である。山…

やまロス症候群の処方箋

山崎豊子が亡くなって一ヶ月がたった。ものごころ付いたときから、この人の作品はくり返しドラマ化されていた。特に改変期のスペシャル・ドラマなんか、彼女と松本清張と有吉佐和子のローテーションで成り立っていたといって過言ではない。「女系家族」や「三…

ギャグ密度

前回は小林信彦のマネをして体験的ユーモア小説論なるものを書いてみたが、どうも小林先生ほど上手く書けない。理由は分かっている。体験をふまえて書くといっておきながら、小林信彦の史観に引きずられて、「北杜夫における精神的スラップスティック」とい…

ユーモアとスラップスティック

なんとなくタイトルにひかれて小林信彦のエッセイ集「定年なし、打つ手なし」を手にとってみた。70年代から80年代にかけてサブカル青年のスターだった小林先生も、老後はかなり不安を抱えて生きているようで寂しい気分になった。かつては筒井康隆と並び…

嘘にもほどがある

掃除をしてたら部屋の隅にタバスコが転がっているのを発見した。ボトルに1/3ほど残っている。相当古いタバスコらしく、中の液体がドス黒く変色していた。「もうあきまへんで」という感じの凶悪なドス黒さである。俺は「まいったなあ・・・」と思いながらも、…

最後に嘘をつく

ある日、唐突に、そういえば「愛と青春の旅だち」をまだ見てなかったことに気が付いた。ちょうどその時は図書館に本を返しに行く途中だったので、本を返してから図書館のDVDコーナーを何気なく覗いてみた。そしたらちゃんとあるではないか。これはどう考…

妖異金瓶梅の配列

近所の図書館に「妖異金瓶梅」が入ったので早速借りてきた。「妖異金瓶梅」とは中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」をミステリーとして翻案した連作短編集だ。山田風太郎が忍法帖でブレイクする前、探偵作家だった時代の代表作である。ここ数年、角川文庫で編纂…

突然変異手塚アニメ(2)

手塚治虫がなくなったとき、「Comic Box」という雑誌が手塚の特集をして、各界の著名人からの追悼文を載せていた。宮崎駿も寄稿していたけど、その内容が後々まで語り草になるほど凄まじいものだった。実は俺もこの特集号をリアルタイムで購入して宮崎の追悼…

突然変異手塚アニメ

ちょっと前に「アニメ師・杉井ギサブロー」というドキュメンタリー映画を見た。杉井ギサブローとは80年代にTVアニメ「タッチ」の演出で名を上げ、続いて劇場用アニメ「銀河鉄道の夜」を監督した人だ。俺の印象だと70年代の後半に出崎統が出てきて、次…

獅子心王、尊厳王、失地王(4)

前回は「ロビン・フッド」の時代を通り越して十字軍運動の顛末まで話が飛んでしまった。なぜ十字軍の話を始めたかというと「ロビン・フッド」を理解するのに必要だったからだ。しかしその顛末にまで話を広げる必要はなかった。調子に乗りすぎだね。今回は時…

獅子心王、尊厳王、失地王(3)

前回はノルマン・コンクエストの話で終わってしまったので、その続きから。今度こそ本当に「ロビン・フッド」の話に入るぞ。本当だぞ。 ノルマン・コンクエストから30年後の1096年、第一回十字軍の遠征が始まる。いよいよ十字軍時代の幕開けである。こ…

獅子心王、尊厳王、失地王(2)

前回は「ロビン・フッド」の話題の前ふりのつもりで「キング・アーサー」の話を始めたら止まらなくなってしまい、そのまま終わってしまった。今回はちゃんと「ロビン・フッド」を語るつもりだ。でもその前に、ついでだから「キング・アーサー」の時代から「ロ…

獅子心王、尊厳王、失地王

今朝はなかなか印象的な夢で目が覚めた。俺は学校の教室みたいな場所にいた。その教室には机も椅子もなく、代わりに四十個ほど洋式便器が生えていた。その中の二個が壊れていて、ウンコが流れない。俺は必死でバケツの水をかけたりして溜まったウンコを流そう…

陰影の新基準

やはり1971年という年が重要である。この年は、前回の記事にも書いたけど、70年代アメリカ映画のルックを決定した撮影監督ヴィルモス・ジグモンドが2本の西部劇を撮って関係者の度肝を抜いた年だ。一般的な映画ファンにとっては「フレンチ・コネクション」と…

ニューシネマ西部劇の映像美

西部劇というジャンルは60年代に入るあたりから衰退して、アメリカ本国では製作本数が激減していった。その空白を埋めるかのようにマカロニ・ウエスタンがブームになるけど、それもすぐに飽きられてしまう。いよいよ西部劇はもう駄目かという時に登場したの…

1970年の官能

なんか映画の國名作選と銘うってイタリア映画のクラッシック3本が劇場公開されている。 http://www.eiganokuni.com/meisaku-itaria1/ 映画の國というのは紀伊國屋書店が出しているDVDレーベルの事らしい。要するにDVDの宣伝のためのリバイバル公開とい…

1969年のオシャレ

先日「マリアンの友だち」のビデオを見てたら、あるシーンで奇妙なデジャブを感じた。「マリアンの友だち」はジョージ・ロイ・ヒル監督が「明日に向って撃て」からさかのぼる事5年前に撮った青春映画である。女子高生二人組が街でたまたま見かけた中年男を追い…

1968年の映像美

先日ユーチューブで「2001年宇宙の旅」をなにげなく見始めたら、途中でやめられなくて最後まで見てしまった。最初は類人猿のくだりだけ見るつもりだったのになあ。この映画はスクリーンで見ないと見たことにならないと言われてるけど、いまだに映画館で見たこ…

横溝系フランス映画

俺は常々フランス人は意外と横溝正史が好きなんじゃないかという疑いを抱いている。フランス映画を見てると、たまに横溝的世界観をもつ作品に出会う事があるのだ。最初に怪しいと感じたのはジャン・ジャック・アノーの「薔薇の名前」を見たときだ。そのおどろ…

映画ファンは妄想がお好き(2)

前回は横溝正史の「八つ墓村」を取り上げて、「俺ならこう映画化するね」という妄想をえんえんと語ってしまった。あきれる人もいるかも知れないが、この種の妄想は映画ファンにとっては日常茶飯事である。さて今回は皆様お待ちかね(?)、恋と冒険の一大ロマンとし…

映画ファンは妄想がお好き

前々回からずっと金田一とか横溝のパチモンについて書いてるけど、書きながらどんどん妄想が膨らんででくるのを抑えられなかった。どんな妄想かって? 映画ファンの妄想といえば相場が決まっている。「俺ならこう映画化するね」というやつだ。小説を読めば必ず…

東映ラプソディ

前回の記事で、横溝映画は日本のジャーロであるという結論になったけど、この話題は面白いのでもう少し続けたい。70年代の横溝ブームは、角川・東宝の一連のシリーズによって火がついて、松竹の「八つ墓村」で頂点に達したという図式である。しかしジャーロ的観…

伊太利亜黄表紙(2)

マリオ・バーヴァという人は凄い監督ではあるけども、その作品は必ずしもバランスの取れたものではない。前回も書いたように、映像は凄いけど話はデタラメという作品が多い(一本も見てないけど)。そういうムラのある人だからこそジャーロという特異なジャン…

伊太利亜黄表紙

ダリオ・アルジェントの新作「ジャーロ」が来月から公開される。公式サイトはこちら。 http://www.finefilms.co.jp/giallo/ 上映館はまたしてもシアターN渋谷だ。しかし予告編を見ると、あまり面白そうじゃないなあ。わざわざ見に行くほどの映画ではないよう…

黒死館のアルジェント

前回の記事で観ゼミの告知をしてしまったので、事後報告的なものを書かなきゃいけないんだけど、どうにも気力が出ないまま二週間が経過してしまった。なぜ気力が出ないかというと、映画がそんなにテンションの上がる作品じゃなかったからだ。はっきり言ってヌル…

観ゼミのお知らせ

急な話で申し訳ないけど、来週、久しぶりに観ゼミを開きたいと思います。 観ゼミというのは学生時代からやっている事だけど、要はみんなで集まって映画を見るという、ただそれだけの事です。もともと大学のサークルで伝統的に行われていた行事なんですが、単に…