やっぱり象が好き


 これは横山光輝の「三国志」に出てくる象だ。個人的にまんが史上最高の象だと思っている。好きだなあ、この目。セリフも象が言ってるように見える。昔から象が好きで、まんがとか映画に象が出てくるとわけもなく嬉しくなってしまう。特に古代を舞台にした戦争ものは、暴れまわる象が見られるので大好きだ。何しろ象は古代の大量破壊兵器だから。
 「ガーディアン/ハンニバル戦記」という映画を見た。正確に言えばBBC製作のTVムービーだ。有名なカルタゴの猛将ハンニバルの伝記映画だ。一種の歴史教育もので、当時の時代背景や政治状況、衣装や美術に至るまで史実に忠実に描いている。この手のものを年表的にダラダラと描いてしまう日本映画と違って、スピーディーに展開するので退屈しない。
 ただ演出がもろに「24twenty four」の影響(手ぶれ、小刻みなズーム)を受けていて、あまり古代気分が盛り上がらないのが残念。だんだんハンニバルがテロリストに見えてくる。まあ主演が貫禄のない若僧なので、テロリストと間違えれれても仕方ないか。この若僧は顔がアンソニー・ホプキンスに似てるので、ハンニバルつながりでプロデューサーが安直にキャスティングしたのかもしれない。しかし最も致命的なのは、ローマに入ったとたん象が病気になって全然活躍しないことだ。まあアルプス越えする象の映像を見られただけでも良かったけど。あとザマの戦いでスキピオの取った「象封じの戦略」が正確に映像化されているのも嬉しい。
 最近の研究成果では象には人を驚かす以上の効果はなかったというが、俺はそんなこと信じない。こんな妄説に惑わされる映画製作者が多すぎる。「300スリーハンドレッド」だっていまいち象が弱くて腰砕けだった。みんな次々と人を踏み潰す象が見たくないのか? とにかく映画製作者にお願いしたいのは、もっと強い象を見せてほしいということだ。
 その点「アレキサンダー」は良かった。ちゃんと象の恐ろしさを描いてくれた。完全に怪獣映画の演出だった。ちなみに象の発するにおいは馬が嫌うので近寄れない。アレキサンダー軍が苦戦したのもそのせいだ。しかしその中でただ一頭、敢然と象に立ち向かった馬がいた。少年時代から共に過したアレキサンダーの愛馬ブーケファルスである。有名な逸話だが、そんな感動的な場面ををスローモーションで見せてくれる。オリバー・ストーンはわかってるなあ。
 しかし映画の中のベスト・オブ・象は何といっても「ハタリ!」だ。古代の戦争映画じゃないけど、この映画に出てくる三匹の子象はすばらしい。いたずら子象という形容がぴったり来る可愛らしさだ。名曲「子象の行進」はこの映画のサントラである。そもそもは猛獣狩りのスリルを描いた映画で、そんな見せ場がたくさん出てくるのだが、クライマックスはなぜかこのいたずら子象たちが町を駆け回るシーンだった。最高じゃないか!