2013-01-01から1年間の記事一覧

社会派ドラマ円環(3)

長々と書いてきた社会派ドラマ論もようやく大詰めを迎える。前回は山本薩夫と和田勉という二人の巨匠の話で終わってしまったが、今回は「半沢直樹」に直接影響を与えた作品群について語っていこう。社会派ドラマというジャンルは80年代になるといったんオ…

社会派ドラマ円環(2)

今回もしつこく「半沢直樹」について書いていくよ。前回の記事で、このドラマは黒澤明が果たせなかったリアリズムとロマンティズムの融合を、半世紀のときを経て見事に果たしてしまった、と書いた。どうしてそんなことが出来たのかをこれから明らかにしたい…

社会派ドラマ円環

月日のたつのは早いもので、大ブームになった「半沢直樹」が終わって二ヶ月がたった。この番組が最終回で今世紀最高の視聴率をはじき出した一週間後、社会派小説の巨匠である山崎豊子が亡くなった。なにやらオカルトめいた暗合を感じさせる出来事である。山…

やまロス症候群の処方箋

山崎豊子が亡くなって一ヶ月がたった。ものごころ付いたときから、この人の作品はくり返しドラマ化されていた。特に改変期のスペシャル・ドラマなんか、彼女と松本清張と有吉佐和子のローテーションで成り立っていたといって過言ではない。「女系家族」や「三…

ギャグ密度

前回は小林信彦のマネをして体験的ユーモア小説論なるものを書いてみたが、どうも小林先生ほど上手く書けない。理由は分かっている。体験をふまえて書くといっておきながら、小林信彦の史観に引きずられて、「北杜夫における精神的スラップスティック」とい…

ユーモアとスラップスティック

なんとなくタイトルにひかれて小林信彦のエッセイ集「定年なし、打つ手なし」を手にとってみた。70年代から80年代にかけてサブカル青年のスターだった小林先生も、老後はかなり不安を抱えて生きているようで寂しい気分になった。かつては筒井康隆と並び…

嘘にもほどがある

掃除をしてたら部屋の隅にタバスコが転がっているのを発見した。ボトルに1/3ほど残っている。相当古いタバスコらしく、中の液体がドス黒く変色していた。「もうあきまへんで」という感じの凶悪なドス黒さである。俺は「まいったなあ・・・」と思いながらも、…

最後に嘘をつく

ある日、唐突に、そういえば「愛と青春の旅だち」をまだ見てなかったことに気が付いた。ちょうどその時は図書館に本を返しに行く途中だったので、本を返してから図書館のDVDコーナーを何気なく覗いてみた。そしたらちゃんとあるではないか。これはどう考…

妖異金瓶梅の配列

近所の図書館に「妖異金瓶梅」が入ったので早速借りてきた。「妖異金瓶梅」とは中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」をミステリーとして翻案した連作短編集だ。山田風太郎が忍法帖でブレイクする前、探偵作家だった時代の代表作である。ここ数年、角川文庫で編纂…