2009-01-01から1年間の記事一覧

SF恐怖省

学生時代からの友人が結婚する事になった。仲間内のしきたりとして、学生時代に作っていた同人誌を誰かが結婚するたびに復活させるという習慣があった。俺はそのたびに評論めいた文章を寄稿していたが、去年からブログを始めてしまったので、似たような文章…

かめえろボンド化計画

前回の記事を書くために、「ドクター・ノオ」の映画版を見てから原作を読み返してみた。念のために「ロシアより愛をこめて」の映画と原作もチェックした。そうしたら止まらなくなってしまった。本棚から007シリーズの文庫を引っ張り出して、処女作の「カジ…

アクション映画の誕生

ハリウッド映画に対しては、複雑な感情を抱いている方も多いと思う。アンチ・ハリウッド派からは、あんなもの映画じゃなくてアトラクションだとか、まるで工業製品だとか言われている。それはそれでよく分かるんだけど、どこか否定しきれない部分があるんだ…

ガラパゴス化する日本映画

いや、この記事が面白かったから紹介しようと思っただけなんだけどね。 http://filmmania.blog.so-net.ne.jp/2009-07-12 日本映画がいかに世界基準から遠く離れているかを、徹底的に技術論から解き明かしている。こういうの大好き。みんなぜひ読んでみて。個…

英蘭東印度会社群像

1629年6月4日未明、オランダ東インド会社の商船「バタヴィア号」が、オーストラリア大陸の西岸沖で座礁した。船長アリアン・ヤーコブスと上級商務員フランシスコ・ペルサートは、乗員乗客を近くの無人島に避難させ、救援を求めて、47名の乗員ととも…

これが本当の南部ゴシック

映画評論家の町山智浩によると、「悪魔のいけにえ」は南部ゴシックの系譜に連なる作品だという。南部ゴシックとは町山の表現を借りれば、「アメリカ南部のど田舎に退化した人間たちがいて、ふらふら迷い込んできたよそ者を捕まえてはなぶり殺しにする」映画…

トビー・フーパー雑感

休日の午後、クーラーの効いた部屋で淹れたてのコーヒーを飲みながらビデオ鑑賞。我ながら安あがりだと思うけど、それだけで十分いい人生だと思ってしまう。ホームレス大学生だった頃と比べれば、貴族のように優雅な生活だ。たまに自分がいまだに生きている…

ポトラッチの経済学

いきなり転載で恐縮だけど、ちょっと前のニュースから。 「日本に謝罪」…かつて対日批判急先鋒の米ノーベル賞教授 【ニューヨーク=山本正実】「私たちは、日本に謝らなければならない」――。2008年のノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン米プ…

クール・ジャパン論争

何年か前に、世間でやたらとクール・ジャパンなる言葉がはやったことがあった。そんなときに読んだのが「模倣される日本」だ。著者は前回の記事でも紹介した東大教授の濱野保樹。この本はクール・ジャパン論の古典であり、映画やアニメ、ファッションにいた…

クロサワの呪い

プロ野球のオーナー企業の変遷をたどっていくと、日本の基幹産業の移り変わりが見えてくる。「古くは映画会社、鉄道会社、食品会社らを経て今はIT産業である」なんてことをライブドア騒動のときに散々マスコミが書いてたなあ。しかしそういう記事では必ず…

ポール・ウイリアムスと俺

今年はカーペンターズのデビュー40周年だそうで、レコード屋にはベスト盤やトリビュート盤、DVDなんかが店頭に並んでいる。俺は今日、久しぶりにレコード屋に入って初めてそのことを知った。まあ何にしてもカーペンターズは嫌いじゃないので、早速視聴…

アドリブ話法ふたたび(2)

半村良という人は言うまでもなく日本SFの巨匠なんだけど、初期の「石の血脈」「産霊山秘録」「妖星伝」なんかが当時の読書人に与えたインパクトはかなり凄かったようだ。巨石信仰や吸血鬼伝説、あるいは歴史を裏で操る闇の一族といった古色蒼然とした道具立て…

アドリブ話法ふたたび

この記事は3月に書いた「アドリブ話法」の続きです。 ギャオで放送していた「ツインピークス」がやっと終わった。うわさ通りのバッド・エンディングだった。ユーザー・レビュー欄を見てみると、終わり方に納得していない人が多いようだ。しかしこれは別に終わっ…

トマス・コレクション

トマスが転勤して一ヶ月たつ。大学時代は毎日のように一緒に遊んでた間柄だ。馬鹿みたいにけらけら笑いながら何時間もダベっていた。二人きりでいくらでもダベり続けることが出来た。ここ数年はそれほど頻繁に会ってたわけではないけど、いつでも会えるとい…

たまには日記らしく

風呂上りに今日の出来事をささっと書いて寝よう。 今日は友人にCDを貸したついでに二人で焼肉ランチを食べた。ランチタイムなので結構こんでいた。店内ではあちこちで豚インフルエンザの話題で盛り上がっていた。それにつられて我々も「復活の日」の話なんぞ…

競馬シリーズとディケンズ

どうもいかんなあ。玄関に積みっぱなしのビデオを片付けようとしたのだが、ついパッケージの解説文を熟読したりして、ちっともはかどらない。そのうちなぜか本棚の奥のディック・フランシスを手にとってしまい、猛烈に懐かしくなって代表作の「興奮」を読み始…

リアルのベクトル

ギャオで放送中の「ツイン・ピークス」だが、一日一話のペースで見ていればすぐに終わると思って、先月のブログでそのように書いた。しかしよく見たら週二話しか配信されていないではないか。あっという間に追いついてしまったので、仕方なく同じくギャオで放…

あんたの時代はよかった

久しぶりに「太陽を盗んだ男」を見直した。理科の先生は何でもできるんだなあ。 物心ついたときは沢田研二の時代だった。俺が最初に認識したスター(スーパー・スターと形容されていた)といえる。俳優としての代表作はドラマ「悪魔のようなあいつ」、映画「太陽を…

唯物語批評

ガチガチの政治論文を、物語批評の手法で論じてみよう。今回選んだ本は「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」だ。上下合わせて600ページを超える大作なので読むのにちょっと骨が折れた。これは世界中で、政治論文としては異例のベストセラーになった…

無間地獄系日本映画

石原裕次郎の十七回忌の時に映画「黒部の太陽」の特別上映があった。5年くらい前だ。招待券が当たったので見に行ったが、今となってはどんな話だったか思い出せない。なんだかひたすら穴を掘っては水に流される映画だった。俺の印象では上映時間の半分は穴を…

アドリブ話法

最近ギャオで「ツイン・ピークス」の放送が始まったので、一日一話のペースでじわじわと見ている。これは90年代の初めごろに一世を風靡したアメリカのTVドラマだ。製作総指揮はデビッド・リンチ。懐かしいなあ。 とはいっても当時の俺はそんなに真剣に見…

やっぱり象が好き

これは横山光輝の「三国志」に出てくる象だ。個人的にまんが史上最高の象だと思っている。好きだなあ、この目。セリフも象が言ってるように見える。昔から象が好きで、まんがとか映画に象が出てくるとわけもなく嬉しくなってしまう。特に古代を舞台にした戦…

唯物語論(2)

いわゆる文系学問の中で、高等数学を駆使する経済学だけが唯一科学として成立しているといわれているが、これが怪しいのだ。経済学は第二次大戦後のアメリカで巨大な発達をとげた学問だ。戦前あたりから心理学、経済学、社会学がシステム論(多変数の相互連…

唯物語論

年末に書いた韓国映画論のシメで、ものを論じるのは物語を作ることだ、という言葉がひょいと浮かんだのでそのまま書いてしまった。これがどこから出てきた言葉なのか自分でもわからなかったのだが、ようやく思い出した。これは新しい歴史教科書をつくる会が…

俺ならこう映画化するね(2)

今回の文章は「クライマーズ・ハイ」の映画版、ドラマ版、原作のどれかを見て(読んで)いないと面白くないと思います。 ドラマ版は二週にわたって放送され、合計すると150分になる。これでも映画版の145分と比べて5分しか違わない。にもかかわらず映…

俺ならこう映画化するね

近所のレンタル・ビデオには割引の日というのがあって、そういう時は無理やりにでも何か借りずにはいられない。その日も俺は飯を食おうと商店街をぶらぶらしてたら、レンタル・ビデオの店頭に割引の旗が立っているのを見つけて、そのまま中に入っていった。…

差別用語のつくり方

前回のコメント欄でid:picon00と「カリスマ」という言葉についてやり取りしたんだけど、彼女の発言には考えさせられるものがあった。そこで今回はこの「カリスマ」問題を追及してみよう。まず「カリスマ」を辞書で引いてみると・・・・ Charisma(独) 超自…

ジャン・ピエール・ジュネの罪

女性映画が苦手だ。どうもOLが好んで見るような映画が俺には合わないようだ。特にラブ・コメの入ってないストレートな恋愛映画には、どうしても興味がわかない。まあそれでもたまに見てしまったりするんだけど。 ちょっと前にアメリカ映画「私がクマにキレ…

初笑い! 新春スパークス三連発

あけましておめでとうございます。 いつもダラダラした文章を辛抱強く読んでいただいてありがとうございます。 書きながら考えるタチなので、思考が停滞すると無意味な文章が続いてしまうのです。 しかしながら俺の理想は簡潔に本質を突く文章なので、今年は…