2010-01-01から1年間の記事一覧

横溝系フランス映画

俺は常々フランス人は意外と横溝正史が好きなんじゃないかという疑いを抱いている。フランス映画を見てると、たまに横溝的世界観をもつ作品に出会う事があるのだ。最初に怪しいと感じたのはジャン・ジャック・アノーの「薔薇の名前」を見たときだ。そのおどろ…

映画ファンは妄想がお好き(2)

前回は横溝正史の「八つ墓村」を取り上げて、「俺ならこう映画化するね」という妄想をえんえんと語ってしまった。あきれる人もいるかも知れないが、この種の妄想は映画ファンにとっては日常茶飯事である。さて今回は皆様お待ちかね(?)、恋と冒険の一大ロマンとし…

映画ファンは妄想がお好き

前々回からずっと金田一とか横溝のパチモンについて書いてるけど、書きながらどんどん妄想が膨らんででくるのを抑えられなかった。どんな妄想かって? 映画ファンの妄想といえば相場が決まっている。「俺ならこう映画化するね」というやつだ。小説を読めば必ず…

東映ラプソディ

前回の記事で、横溝映画は日本のジャーロであるという結論になったけど、この話題は面白いのでもう少し続けたい。70年代の横溝ブームは、角川・東宝の一連のシリーズによって火がついて、松竹の「八つ墓村」で頂点に達したという図式である。しかしジャーロ的観…

伊太利亜黄表紙(2)

マリオ・バーヴァという人は凄い監督ではあるけども、その作品は必ずしもバランスの取れたものではない。前回も書いたように、映像は凄いけど話はデタラメという作品が多い(一本も見てないけど)。そういうムラのある人だからこそジャーロという特異なジャン…

伊太利亜黄表紙

ダリオ・アルジェントの新作「ジャーロ」が来月から公開される。公式サイトはこちら。 http://www.finefilms.co.jp/giallo/ 上映館はまたしてもシアターN渋谷だ。しかし予告編を見ると、あまり面白そうじゃないなあ。わざわざ見に行くほどの映画ではないよう…

黒死館のアルジェント

前回の記事で観ゼミの告知をしてしまったので、事後報告的なものを書かなきゃいけないんだけど、どうにも気力が出ないまま二週間が経過してしまった。なぜ気力が出ないかというと、映画がそんなにテンションの上がる作品じゃなかったからだ。はっきり言ってヌル…

観ゼミのお知らせ

急な話で申し訳ないけど、来週、久しぶりに観ゼミを開きたいと思います。 観ゼミというのは学生時代からやっている事だけど、要はみんなで集まって映画を見るという、ただそれだけの事です。もともと大学のサークルで伝統的に行われていた行事なんですが、単に…

映画の叙述トリック(2)

前回の記事を書いてからずっと考えている事がある。「ユージュアル・サスペクツ」問題である。この映画は叙述トリックの名作という評判があるけど、俺にはどうしてもそうは思えないのだ。もちろんこれが犯罪サスペンス映画の一級品であることは間違いない。し…

映画の叙述トリック

悪名高いディズニーの「アトランティス」を借りてきた。何故悪名高いかはこれを参照。 http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/9219/atlantis.htm 要するに「ジャングル大帝」に続いて、今度は「ナディア」をパクったわけだ。とはいえ「ナディア」に関し…

小説以外の叙述トリック

まず有名なPVを紹介しよう。これは某有名映画のパクリだけど、よく出来てる。 さて今回は叙述トリックのお話。小説や映画でその手のやつは腐るほどあるけど、それ以外のジャンルではなかなか無いみたいだ。しかし叙述トリック好きの俺としては、あらゆるジ…

うつし世はゆめ

ある日とつぜん、かめえろと名のる猫がぼくの家をたずねてきて、ペネトレに会わせろという。ペネトレはぼくが小学五年生のときから、ぼくの家にすみつくようになった猫なんだ。ぼくとペネトレとの対話が本になったのは、もう十年いじょうも前のことだ。その…

ヨーロッパ王室映画祭

16世紀のヨーロッパはちょうど近代が始まった頃なので、色々面白い人間がいて映画のネタにも事欠かない。ただヨーロッパの王室は、国をまたいだ政略結婚をバンバンやってたので系図が入り乱れている上に、似たような名前が何人もいるので訳がわからなくな…

アンチ自分探し派

20世紀最大の哲学者といえば、ハイデガーとヴィトゲンシュタインだ。俺は断然、ヴィトゲンシュタイン派だなあ。理由は単純、かっこ良いからだ。なにしろオーストリア随一の資産家の家に生まれ、姉はクリムトのモデル、兄は有名なピアニスト(第一次世界大…

視点と人称について(3)

映画における一人称についてあれこれ書いてきたけど、今まで紹介してきた映画は特殊な例である。普通に一人称小説を映画化しようと思ったら、結局は三人称映画にするしかないのだ。それくらい映像による一人称表現は使い方が難しい。という事で次は映画にお…

視点と人称について(2)

映像による一人称表現は難しい。時間経過や場所移動を省略できないのでどうしても間延びしてしまうのだ。しかし「クローバーフィールド」はその突破口を提示してくれた。全編ホーム・ビデオの映像というコンセプトよって、間延びの問題がクリアされているの…

視点と人称について

さて、前回は鳴かず飛ばずの小説家だったジャック・ヒギンズが、意識的に自己改造して自作に映画的手法を導入し、そのお陰でベスト・セラー作家になれたという仮説を展開した。この仮説は、彼の作品における人称の変化からも裏付けられる。念のためにヒギン…

自己改造した作家

去年の正月に帰省したときの話だけど、父親が歳をとってきたので寝室を二階から一階に移す事になった。それで一階にある俺の部屋を明渡すハメになった。俺はとりあえず部屋の荷物をざっと整理して物置に放り込んでおいた。それから一年経って、今度は物置の…

笑いと恐怖は紙一重

新年一発目に借りた映画が原田眞人監督の「伝染歌」だ。これは実に奇妙な映画だったなあ。一応ホラー映画ということになっているけど、コメディの要素が大量に挟み込まれているので、分類不能な作品になっている。もちろんホラーにユーモアを挟み込むのは戦…