裁判員制度に寄せて(2)

 書いてる途中でヘンなところを押したらUPされてしまった。以下は続きです。
 大規模小売店舗法大店法)は、大型店舗の出店を規制することで中小の小売店を保護する法律である。その大店法アメリカの圧力で1998年に改正された。それによってウォルマート(米)、カルフール(仏)、トイザらス(米)といった外資系大型小売店が続々日本に参入してきた。
 さて大店法改正から10年経った今の状況はというと、ウォルマートに買収された西友は6期連続の赤字、カルフールは日本撤退、トイザらスも拡大する赤字に苦しんでいる。大型店舗の出店ラッシュにより地方の商店街は壊滅。シャッター商店街のニュースが連日メディアで流れていたのも記憶に新しい。大型店舗の独占状態になったところで、消費の落ち込みにより今度はその大型店舗の閉店ラッシュ。そして誰もいなくなったという結末である。
 この話にはさらにオチがある。周辺の中小小売店を根こそぎにするウオルマート商法の悪影響を懸念したアメリカは、大型店舗の出店を規制する方向に向かっているという。日本の大店法を、グローバルスタンダードに合わないとか何とか言って変えさせたアメリカが、自国がヤバくなるとさっさと前言を翻して規制を強化してしまうのだ。
 そういえばアメリカが日本に規制緩和を要求した時のロジックは確かこんな感じだった。「日本の消費者は規制によって不当に高い商品を買わされている。規制緩和は消費者のためなのだ」と。初めて聞いた時はそんなもんかと思ったが、今から思えばこれはアメリカ官僚のひねり出した屁理屈だった。そもそも消費者は働いて金を稼がなくてはモノを買えない。つまり消費者イコール労働者である。そして規制緩和によってモノの値段が下がれば、労働者の賃金も下がってしまう。賃金が下がれば消費はできない。だからモノの値段が下がっても、消費は落ち込んでしまう。これが今の状況なのだ。
 話を戻そう。「司法占領」にはアメリカの巨大ファームがひとり勝ちするだろうという予測が描かれているわけだが、俺はその予測は外れると思う。大店法改正の時のように、日本の市場を荒らすだけ荒らした挙句、結局は勝ち組なんて誰もいないという結果になるんじゃなかろうか。
 読んでる時に感じていた違和感とは、あまりにもファームの思惑通りに進みすぎてるということだ。小説だから仕方ないんだけど、しょせん依頼人に財布の紐を緩めてもらわなければならない客商売なんだから、あれだけ日本人をないがしろにして経営が成り立つわけないだろう。いくらアメリカが政治力に物を言わせて市場をコジ開けたとしても、商売は水もの、アメリカ流の合理的経営が日本で成功するとは限らないのだ。ウォルマートらの例を見ればよくわかる。ましてや法律業務なんて日本人の感覚に密着した仕事なんだから、その難しさは小売業の比じゃないよ。
 さて、現在アメリカでは訴訟の増加が限界に達していて、裁判よりも調停で解決する方向に向かっているそうだ。調停で解決って日本のお家芸じゃないか! 日本の司法制度をアメリカ流に変えておいて、自国ではこっそり日本のやり方を取り入れる。大店法の時とおんなじだ。

司法占領

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