韓国映画ブームとは何だったのか

 すっかり韓国映画の話題を聞かなくなってしまった。「トンマッコル」とか「グエムル」とかテレビでバンバンCMやってたし、レンタル・ビデオでは棚一面を占領してたのに。
 韓国映画に関してはあのあたりを境に、急激に火が消えてしまった感じである。大体二年前くらいだ。いまやレンタル・ビデオの韓国コーナーでは、ドラマはそうでもないけど、映画のスペースがどんどん縮小されている。新作コーナーに並んでいる作品も聞いたことのないものばかりである。というか近所のレンタル・ビデオでは、新作コーナー自体アジア・コーナーでひと括りにされていて、三国志関連のDVDに良い場所を取られて韓国作品は一番下に追いやられている有様だ。諸行無常である。
 なぜ今更こんなことを書いているかというと、年末なので今年一年を振り返ろうと思っていろいろ考えたのだが、今年は韓国映画を見まくっていたという事ぐらしか書けることがなかったのだ。なぜ見まくったのかというと、理由はない。何かきっかけが有ったわけじゃなく、ある日ふと思い立ってとしか言いようがない。ともあれそういう訳なので、一年の締めくくりとして韓国映画について書いてみたい。
 恥ずかしながらブームの最中はぜんぜん韓国映画は見てなかった。テレビで「シュリ」と「JSA」を見たくらいだ。とはいえ全く興味がなかったわけではない。「シュリ」はつまらなかったけど「JSA」は面白かった。「電車男」の元ネタが「猟奇的な彼女」だということを聞いて気になっていたし、山本晋也が深夜にやってた「シルミド」の紹介番組を見て、昔の東映や香港映画に通じるアジア的バイタリティに興味津々だった。しかし、ぼやぼやしてるうちに韓国映画ブームそのものが去ってしまった。
 これではいけないと一念発起して、ガイドブックで代表的な作品をチェックし、それらを片っ端からつぶしていったのが去年から今年いっぱいにかけてだ。以下にあげるのは、韓国映画のベストというか、これだけ見れば韓国映画がわかるというエッセンスである。
 「ペパーミント・キャンディ」(99)
 「JSA」(00)
 「悪い男」(01)
 「オアシス」(02)
 「殺人の追憶」(03)
 「オールド・ボーイ」(03)
 一応製作順に並べてあるが、見る順番もこの通りが良い。とりあえずこの6本を見れば韓国映画とは何かがわかる仕組みになっている。もちろんこれ以外にも完成度の高い作品はあるが、ここに挙げたのは特に韓国風味の濃厚な、韓国人にしか撮れない作品群である。
 ちなみにここでは韓流という言葉は意識的に使わないようにしている。韓流という言葉はどちらかというとドラマのほうのブームをさしているニュアンスがあるし、俺は韓国ドラマは映画以上に見てないのでなんともいえないからだ。ただ印象を言えばドラマと映画は全く別物と考えていいようだ。もちろんドラマ人気を当てこんだような企画も多いし、むしろそっちの方がヒットしているのも事実である。だが韓国映画の凄さというのは、ドラマが受けた要因とは別のところにあるように思えるのだ。韓流という言葉を聞くと反射的にヨン様の顔が浮かぶでしょ? でもあの人は映画にはほとんど貢献してないんだよな。
 次回は上記の6本を解説しながら韓国映画の本質に迫りたい。