トマス・コレクション

 トマスが転勤して一ヶ月たつ。大学時代は毎日のように一緒に遊んでた間柄だ。馬鹿みたいにけらけら笑いながら何時間もダベっていた。二人きりでいくらでもダベり続けることが出来た。ここ数年はそれほど頻繁に会ってたわけではないけど、いつでも会えるという安心感が心の支えになっていた。不思議なことにもう気軽に会えないとなったとたん、猛烈な寂しさに襲われた。
 トマスが引っ越す時、俺にダンボール三箱のビデオ・コレクションをくれた。よくレンタル・ビデオの店頭に100円で売っているようなVHSのビデオである。彼はそういうものをつい買ってしまう人間なのだ。コレクションには彼のB級アクションに対する愛が詰まっている。リー・マービンジャン・ポール・ベルモンドのアクション映画、香港映画にマカロニ・ウエスタン。その中にひょいとゴダールが混じってたりするのがいかにも彼らしい。
 ひまなときに少しずつ見ているが、量が多いのでなかなか消化しきれない。玄関に積みっぱなしのダンボールから適当に取り出して、見終わったら部屋にしまうというやり方をしているが、これだといつまでたってもダンボールが積みっぱなしになってしまう。だから今日は一念発起して、起きてからずっとコレクションの整理をしている。