小説以外の叙述トリック

　まず有名なＰＶを紹介しよう。これは某有名映画のパクリだけど、よく出来てる。

　さて今回は叙述トリックのお話。小説や映画でその手のやつは腐るほどあるけど、それ以外のジャンルではなかなか無いみたいだ。しかし叙述トリック好きの俺としては、あらゆるジャンルにひそむ叙述トリックをチェックせずには居られない。一体、小説以外ではどういうトリックが可能なのか興味あるところだ。
　浅野いにお原作の映画「ソラニン」が大ヒット上映中との事で、テレビではＣＭがバンバン流れている。等身大の若者を描いた青春映画らしい。ＣＭを見る限りあまり面白そうじゃないので、見に行く事はないだろう。ただ原作の浅野いにおは最近注目のまんが家だし、大分前から気になっていた。にもかかわらず俺は今まで読んだことがなかった。なぜなら周りでは彼の評価がすこぶる悪いからだ。以前、飲み会で「浅野いにおって最近評判だけど面白いの？｣と聞いたところ「つまんないつまんない｣の大合唱だった。どうも青臭くて読んでいられないらしい。
　そういうわけで浅野いにおに対する興味を失ってしまったわけだが、ある日ネットを散歩してたらこんなのを見つけた。↓大どんでん返し小説を発見するスレ
http://saturn.in.arena.ne.jp/uwasa/bbs/readres.cgi?bo=books&vi=1104401801
　ここの３０６〜３４８で浅野いにおの「ひかりのまち」が話題に上っている。それによると、このまんがには叙述トリックが仕込まれているらしい。俄然興味がわいてきたので、さっそくブックオフに行って立ち読みしてみた。なんだか構図の切り取り方とかコマ運びが独特で、読むのに時間がかかりそうだ。腰を据えて読んだ方がいいと判断したので、買ってきて家で読んだ。で、読んでみたは良いけど、どこが叙述トリックなのかサッパリ分からない。そういえば↑のスレでも分からないという書き込みがあったなあ。そう思ってもう一度スレをチェックしてみたら、（以下ネタバレにつき反転）騒いでる人はみんなタスクが小学六年生であることに途中まで気付かなかったらしい。タスクの背の低さに気が付かなかったという事か。しかしタスクが初登場する４３ページ４コマ目を見れば、自販機との比率からいってかなり小さい子供だという事がわかるはずである。それに気付かなかった人にとっては確かに衝撃かもしれないけど、俺は最初から子供だと思って読んでいたので、べつに学年が明かされても全く驚かなかった。
　おそらく作者にはトリックを弄する意識はなかったのだと思う。この人はどうも平面的な構図を嫌うらしく、俯瞰や仰角や縦の構図を多用する。距離感を狂わせるような画になりがちなので、結果的に誤解する人が多くなってしまったに過ぎないんじゃないかな。そういうことなので、「ひかりのまち」を読んで驚きたい方は普通のまんがを読むつもりで軽快にページをめくってくほしい。ゆめゆめ俺みたいに腰を据えてじっくり読まないこと。まあ、そう言われてもいまさら意識するなと言う方が無理か。
　さて↑のスレはどんでん返し系の小説（大半が叙述トリックを使ったもの）を紹介するものだが、小説以外の作品もちらほらと出てきている。中でも気になるのが「Ｅｖｅｒ１７」というゲームだ。俺はゲームについてはかなり疎いので、このあたりは全くノー・チェックだった。しかしゲームで叙述トリックと聞いたら、やらざるを得んだろう。誰か持ってる人がいたらプレイさせてくれ。
　あとスレの後半では映画「ＳＡＷ」について盛り上がってるけど、これはそんなに大したどんでん返しではないと思うけどなあ。叙述トリックでもないし。映画の叙述トリックといわれて誰もが思い浮かべるのは、やっぱり「シックス・センス」じゃないだろうか。後世への影響の大きさからいってもこれを外すわけにはいかない。「アザーズ」や「愛してる、愛してない」なんかは「シックス・センス」の子供たちといっても良いだろう。邦画だと最近では「アフター・スクール」がよく出来ていた。あと「アヒルと鴨のコインロッカー」は叙述トリックのある原作を見事に映像化してて圧巻だった。
　それ以外で叙述トリックのある映画はここで紹介されている。
http://q.hatena.ne.jp/1106783959
　この中には叙述トリックとはいえないような映画も混じっているけど、有名どころは網羅されているようだ。ただ古い映画が全然紹介されてないので、俺が改めてまとめなおす必要がありそうだ。少し調査してみるか。気になるのは舞台で叙述トリックという三谷幸喜の「マトリョーシカ」「バイマイセルフ」クドカンの「鈍獣」（これは最近映画化されたな）である。このあたりも全くノー・チェックだった。
　最後にＮＨＫの教育番組に叙述トリックが仕掛けられていたという珍しい例。
http://www.mis.ne.jp/~sukkie/hiiro/iroiro/iroiro-12.html
　こういうドラマ仕立てのコーナーでトリックを仕込むのは割と簡単にできるけど、例えばスタジオ・トークの部分に叙述トリックを仕込む事は可能だろうか。これは考えてみる必要がありそうだ。